さまざまなマクロレジームにおけるファクターとセクターの動き
- 金利および経済成長の先行きに関する不確実性を乗り越えるには、さまざまな金利および経済成長レジームでファクターおよびセクター指数がどのようなパフォーマンスを示してきたかを理解することが役立つでしょう。
- 過去約50年を振り返ると、金利の水準自体以上に金利の変動がファクターおよびセクター指数のパフォーマンスに影響を及ぼしていたことが分かります。
- ディフェンシブなセクターと特定のファクター指数(低ボラティリティやクオリティなど)のリターンは、市場の動きや経済成長を考慮しても、金利変動に対して明確な逆相関を示してきました。
米国と欧州の中央銀行は、今も2024年中に利下げする意向を示していますが、そのタイミングや利下げ幅についての不確実性が残っています[1]。さらに厄介なことに、先進国の大部分で経済成長率が持ち直しているため、高成長での利下げという異例のレジームに突入する可能性があります。
今回のブログ記事では、1975年11月から2023年12月までの金利と経済成長の関係、およびスタイルファクターとグローバル産業分類基準(GICS®)[2]セクターのパフォーマンスの歴史的な関係を検証します。この分析は、過去に対する深い洞察を得ることにより、金利変動や景気サイクルがポートフォリオのファクターおよびセクター配分のパフォーマンスにどのように影響を与えるかを理解する手助けになるという信念に基づいて行ったものです。
金利水準自体よりも金利の変動がパフォーマンスに大きく影響する
高金利レジームと低金利レジーム、金利上昇期と金利低下期の両方において、MSCIワールド指数のファクター指数とセクター指数をMSCIワールド指数のパフォーマンスと比較し、ファクターとセクターのアクティブなパフォーマンスを調べました。この分析では、10年物米国債利回りを金利の代用変数として使用しています。過去のファクター指数とセクター指数のパフォーマンスを、低い(1)から高い(5)までの利回り水準のレジームと、1ヵ月の利回り変動率の低下(1)から上昇(5)までのレジームを表す五分位に分割しました。
全体的に、金利水準自体よりも金利の変動がパフォーマンスに与える影響の方が大きいことが分かりましたが、その影響にはばらつきがありました[3]。高利回りとバリューファクター指数は、現在の金利レジーム下で良好なパフォーマンスを上げており、2024年4月19日現在で10年物米国債利回り4.62%と一致しています。このレジームは、利回り五分位の中央分位(3)と同水準です。

1975年11月から2023年12月までのデータ。指数リターンは米ドル建てのグロスです。ファクター指数はMSCIワールド指数のものであり、その指数に対してベンチマーク化されています。1998年12月以前のMSCIワールド小型株指数のシミュレーション履歴は、MSCIワールド均等加重指数によって代用されています。出所:セントルイス連銀経済データ(FRED)
予想される通り、金利が低下する環境では、株式の配当利回りの方が債券の利回りよりも魅力的になるため、高利回りファクターは好調なパフォーマンスを示しました。また、金利の低下は将来の配当金の現在価値を高めるため、配当株の価格を押し上げます。低ボラティリティやクオリティといったディフェンシブなどの低ベータファクターも、金利の低下に伴って好調なパフォーマンスを示しました。バリューファクターと小形株ファクターは、利回りが安定または上昇する局面で良好なパフォーマンスを上げました。

1975年11月から2023年12月までのデータ。指数リターンは米ドル建てのグロスです。セクター指数は、MSCIワールド指数のものであり、その指数に対してベンチマーク化されています。1998年12月以前のMSCIワールド小型株指数のシミュレーション履歴は、MSCIワールド均等加重指数によって代用されています。出所:セントルイス連銀経済データ(FRED)
生活必需品やヘルスケアなどの低ベータセクターは、ディフェンシブセクターと同様、金利とのより強い関係性を示しました。例えば、公共事業は最も金利に敏感なセクターであり、金利低下時に最大の恩恵を受けました。金融は、利回りが中程度から高水準で安定していた局面でアウトパフォームしました。
市場の動きや経済成長率の影響を調整した後でも、こうした関係性に変化はない
金利変動は、経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数(CLI)で示される経済成長率に影響を及ぼす傾向がありますが、その効果は遅れて出ることがあり、両者の間に強い重なりは見られませんでした。調査期間中にファクターとセクターのパフォーマンスが金利変動や経済成長率にどのように反応するかを検証するため、多変量回帰分析を実施しました[4]。
低ボラティリティやクオリティといったディフェンシブファクター指数のパフォーマンスは、市場の動きと経済成長率の効果を考慮した後でも、金利の変化に対して強力で有意な負の関係性(金利上昇、パフォーマンスの悪化、その逆も然り)を示しました。バリューは、金利変動に対して顕著な正の相関(金利上昇、パフォーマンスの向上、その逆も然り)を示しましたが、経済成長率についてはその逆の関係が見られました。小型株指数は、金利上昇期だけでなく、経済成長率が改善した時期にも良好なパフォーマンスを示しました。

1975年11月から2023年12月までのデータ。指数リターンは米ドル建てのグロスです。ファクター指数とセクター指数はMSCIワールド指数のものです。1998年12月以前のMSCIワールド小型株指数のシミュレーション履歴は、MSCIワールド均等加重指数によって代用されています。信頼度95%以上のt統計量に対応する係数は、太字で示されています。出所:FRED、OECD
全般的に、セクター指数はファクター指数よりも金利と経済成長率のいずれの変動に対しても強い関係性を示しました。ヘルスケアや生活必需品といった低ベータセクターが両方のマクロ変数に対して明確なマイナスの感応度を示した(成長の減速期と金利低下期にパフォーマンスが良い、またその逆も然り)一方で、素材、エネルギーおよび情報技術のセクターは、金利上昇に対して顕著にプラスの感応度(良好なパフォーマンス)を示しました。資本財・サービスと並んで素材セクターは、金利変動を考慮した後でも、経済成長率が改善する局面で良好なパフォーマンスを示しました。
過去の関係性に学ぶ
過去50年近くにわたり、金利と経済成長サイクルは、ファクター指数とセクター指数のパフォーマンスに大きな違いをもたらしてきました。金利変動は金利水準よりもパフォーマンスにより顕著な影響力を持っていました。これらの歴史的な関係性を把握することで、投資家はマクロ環境の変化に応じたポートフォリオの再配分を検討する際に有用な洞察を得られる可能性があります。
最後に、当ブログ記事に貢献したラフル・スレーシュ・クマール氏に感謝の意を表します。
今すぐ購読するインサイトをメールで直接お届けします。
1 先進国の中で唯一の大きな例外である日本銀行は、2024年3月に短期政策金利を-0.1%から0%~0.1%に引き上げました。
2 GICSは、MSCIとS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスが共同で開発したグローバル産業分類基準です。
3 利回り水準五分位は、分析期間の初期の数年間の高金利を反映する傾向があります。初期のピーク時と比較して持続的な低金利を期待する投資家は、低い五分位に関係する結果に注目するか、より短期間の分析を実施したいと思うかもしれません。
4 回帰分析により、2つのマクロ変数(経済成長率と金利)のファクター指数とセクター指数のパフォーマンスに与える影響を理解し、市場の動きの影響を制御することができます。回帰分析は、それぞれのマクロ変数に対するパフォーマンスの感応度を定量化するとともに、感応度の統計的有意性(t統計量)を計測するのに役立ちます: 𝑅𝑖𝑛𝑑𝑒𝑥=𝛼 + 𝛽𝑚𝑎𝑟𝑘𝑒𝑡.𝑅𝑚𝑎𝑟𝑘𝑒𝑡 + 𝛽𝑟𝑎𝑡𝑒𝑠.𝛥10−𝑦 𝑦𝑖𝑒𝑙𝑑 + 𝛽𝑒𝑐𝑜 𝑔𝑟𝑜𝑤𝑡ℎ .𝛥𝐶𝐿𝐼. ファクターの変動は、他の2つの回帰ファクターである市場リターンと利回りの変動 (𝛥𝑦𝑖𝑒𝑙𝑑)と同じ尺度になるよう、100で除します。
このページのコンテンツは情報提供のみを目的としており、パフォーマンス情報を解釈するために必要な分析リソースとツールを備えた機関投資家向けプロフェッショナルを対象としています。本コンテンツは、いかなる製品、ツール、またはサービスを推奨するものではありません。法律、規則、または規制に関するすべての言及については、情報は「現状のまま」提供されており、法的アドバイスや拘束力のある解釈を構成するものではないことにご注意ください。規制またはポリシー上の要件への対応については、必要に応じて顧問弁護士および/または関連する所轄官庁にご相談ください。
