APAC株式市場におけるMSCI ESG格付銘柄の長期パフォーマンス

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April 8, 2024
要点
  • 過去11年間、MSCI ACアジア太平洋指数で定義するアジア太平洋(APAC)株式市場において、高いMSCI ESG格付けを持つ企業は低格付け企業をアウトパフォームしました。
  • こうしたアウトパフォーマンスは、程度の差こそあれ、APAC地域のほとんどの市場で見られました。
  • ESGの3つのピラー(柱)のうち、ガバナンスが最も高いアウトパフォーマンスを示しており、次いで社会と環境が続きましたが、その相対的な有意性も市場により大きく異なりました。

弊社が行った最近の調査によると、グローバルレベル(MSCI ACWI指数)でも、セクター、地域、企業規模、株式スタイルといったファクター調整後で、長期的に高いMSCI ESG格付けを持つ企業(第5五分位)が低格付け企業(第1五分位)をアウトパフォームしていました1。しかし、APAC株式市場では、このパフォーマンスはどうなっているのでしょうか。

グローバル調査と同様に、MSCI ACアジア太平洋指数2のユニバース上で、セクターや企業規模によるバイアスを避けるべく企業規模調整後のMSCI ESGスコアおよびセクター・企業規模調整後のピラースコアを用いて五分位を作成し3、五分位分析を実施しました。

 

すべてのピラーでアウトパフォーマンスを観測

最初の図表は、MSCI ACアジア太平洋指数において、MSCI ESG格付け最上位五分位の企業が、2013年1月から2023年12月までの期間に最下位五分位の企業をアウトパフォームしたことを示しています。また、この最上位五分位のアウトパフォーマンスは、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の各ピラーについても確認されました。ただし、3つのピラーを各業種に応じた重み付けを行うスキームを用いて1つの総合スコアに組み合わせると、個々のピラースコアよりも一層優れた結果を生み出すことは注目するに値します。

MSCI ACアジア太平洋指数におけるMSCI ESG格付けが最上位の企業と最下位の企業のパフォーマンス
Performance of companies with the highest vs. lowest MSCI ESG Ratings in the MSCI AC Asia Pacific Index

五分位は、調整後のスコアを用いて月次で作成しています。ピラースコアは、最初にグローバル産業分類基準(GICS®)4のセクター別にZスコア化してから企業規模で調整しています。業種調整後のMSCI ESGスコアは、企業規模調整のみが行われます。五分位の翌月のパフォーマンス(現地通貨ベースのリターン)を計算しています。グラフは、最上位五分位と最下位五分位のパフォーマンスの累積差異を示しています。2012年12月31日から2023年12月29日までのデータ。出所:MSCI ESGリサーチ

 

また、総合MSCI ESGスコアのパフォーマンスをAPAC市場とAPAC以外の市場で比較すると、APAC市場の方がグローバル市場やAPAC以外の市場よりも優れたパフォーマンスを示しました。

さまざまな市場における総合MSCI ESGスコアのパフォーマンス
Performance of the aggregate MSCI ESG score in different markets

五分位は、企業規模調整後のスコアを用いて月次で作成しています。MSCI ACWI指数とMSCIワールド指数について、地域別に五分位を作成しています(MSCI ACWI指数については北米、欧州、太平洋、新興国市場のサブ指数を、MSCIワールド指数については北米、欧州、太平洋のサブ指数を利用)。五分位の翌月のパフォーマンス(現地通貨ベースのリターン)を計算しています。グラフは、最上位五分位と最下位五分位のパフォーマンスの累積差異を示しています。2012年12月31日から2023年12月29日までのデータ。出所:MSCI ESGリサーチ

APAC市場のパフォーマンス要因に幅広いばらつき

投資家が抱くもう一つの重要な疑問は、APAC市場において異なるMSCI ESGスコア(個別および総合の両方)のパフォーマンスがどの程度の一貫性を有しているかという点です。個別市場での上場企業数に大きな違いがあるため、この疑問に答えるのは容易ではありません。個別市場について五分位分析を行うと、分位ごとの企業数が比較的少なくなり、結果としてパフォーマンスが集団ごとに固有の要因に大きく左右される可能性があります。

そこで、次の図表に示す通り、市場によるパフォーマンス差異の頑健性を検証するため、五分位、三分位、二分位を用いた上位対下位分析を行いました5 。ほとんどのAPAC市場では、三分位と二分位を用いた最上位対最下位のパフォーマンス差異の方向性が五分位のそれと一致しており、パフォーマンス差異の頑健性が示されました。

五分位分析に基づくと、市場間で総合MSCI ESGスコアのパフォーマンスに幅広いばらつきが見られ、シンガポール、香港、台湾、日本が最上位を占めました。

MSCI ACアジア太平洋指数におけるMSCI ESG格付けの最上位と最下位企業の市場パフォーマンス
Market performance of companies with the highest vs. lowest MSCI ESG Ratings in the MSCI AC Asia Pacific Index

市場ごとの五分位、三分位、二分位を、企業規模調整後スコアを用いて毎月作成しています。五分位の翌月のパフォーマンス(現地通貨ベースのリターン)を計算しています。グラフは、最上位五分位と最下位五分位のパフォーマンスの累積差異を示しています。2012年12月31日から2023年12月29日までのデータ。出所:MSCI ESGリサーチ

E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の各ピラースコアの個別の寄与度をさらに詳細に分析したところ、市場ごとにその相対的な重要性が大きく異なることが確認されました。例えば、シンガポール、香港、台湾、日本、インドなどの一部の市場では、3つのピラーすべてがアウトパフォームしましたが、中国、タイ、マレーシアなどの市場ではピラーごとにパフォーマンスにばらつきが見られました。

さまざまなAPAC市場における、MSCIのE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)ピラースコアと総合ESGスコアのパフォーマンス
アジア太平洋各国におけるESGスコア(青)、Eピラースコア(黄)、Sピラースコア(水色)、Gピラースコア(ピンク)別の累積リターン(%)を示す棒グラフ。韓国のGピラースコアが約125%と全指標・全国中で最高値を記録。シンガポールとインドネシアもESGスコアで高いパフォーマンスを示す。一方、マレーシアとオーストラリアはEピラースコアで約-50%と大幅なマイナスを記録。インドネシアとオーストラリアのGピラースコア、マレーシアのESGスコアもマイナスリターンとなっており、国・ピラーによってパフォーマンスに大きなばらつきが見られる。

市場ごとの五分位を、調整後スコアを用いて毎月作成しています。ピラースコアは、最初にGICSのセクター別にZスコア化してから企業規模で調整しています。業種調整後のMSCI ESGスコアは、企業規模調整のみが行われます。五分位の翌月のパフォーマンス(現地通貨ベースのリターン)を計算しています。グラフは、最上位五分位と最下位五分位のパフォーマンスの累積差異を示しています。2012年12月31日から2023年12月29日までのデータ。出所:MSCI ESGリサーチ

グローバル市場とAPAC市場の間の一貫性

2023年にMSCI ESG格付けの歴史がグローバル市場で11年、先進国市場で17年に達しました。APAC市場におけるパフォーマンス分析では、MSCI ESG格付けの高い企業が長期的に低格付け企業を上回るパフォーマンスを示しており、これはグローバル株式市場(MSCI ACWI指数)での調査結果と一致しています。グローバル市場の分析と同様に、総合MSCI ESGスコアは、E、S、Gの個別スコアよりも堅調なアウトパフォーマンスを示しました。しかしながら、個別市場レベルでは総合スコアのパフォーマンスにばらつきが見られました。また、E、S、Gの個別スコアの相対的重要性が市場によって大きく異なることも確認されました。

 

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1 分析期間は、2012年12月31日から2023年12月29日まででした。

2 MSCI ACアジア太平洋指数は、APAC地域の5つの先進国市場と8つの新興国市場の大型および中型株を対象としています。

3 五分位の作成では、他のコモンファクター(株式スタイルファクターなど)は考慮していません。

4 GICSは、MSCIとS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスが共同で開発したグローバル産業分類基準です。

5 2023年12月29日時点で20以上の構成銘柄を有する市場を対象に分析を実施。その結果、アジア太平洋地域の13市場のうち11市場が分析対象となりました。

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